3.治療について
   
 
  糖尿病の治療は大きく分けると食事療法運動療法薬物療法の3つがあります。2型糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法、すなわち生活習慣の是正です。効果不十分な時は薬物療法を追加します  
   
 

食事療法
食事療法は、食べ過ぎによるエネルギーのとり過ぎをなおし、血糖をコントロールするためです。また、栄養バランスのとれた食事とし、血中脂質・血圧などを良い状態に保つことができます。
糖尿病の半数の人は食事療法をきちんと行なえば、それだけで血糖コントロールが可能といわれています。身長・体重・身体活動量により、その人に必要な摂取エネルギー量が決まりますので、食品交換表を参考に食事療法について学びましょう。

 
     
 
  食品交換表
食品交換表は主に含まれている栄養素によって食品を4群6表に分類し、食品の含むエネルギー量80kcalを1単位とし、同じ表内の食品を同一単位で交換し摂取できるように作られています。交換することで食事内容を多彩にし、バランスのとれた食品構成を作ることができます。
   
 
1日の必要エネルギー摂取量の算出方法
エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量
身体活動量とは体を動かす程度によって決まるエネルギー必要量をいいます。
《身体活動量の目安》
・軽労作(25〜30kcal/kg):デスクワークが主な人・主婦・店員
・中労作(30〜35kcal/kg):立仕事が多い人・農業・林業・漁業・看護師
・重労働(35〜 kcal/kg):力仕事の多い職業・大工・土木建築
   
  食事療法のポイント
1日3食同じくらいに分けて
まとめ食いは、一度に沢山のインスリンが必要になり、膵臓に負担をかけてしまいます。3食偏りのないように摂取しましょう。
野菜やこんにゃく・海藻類で食物繊維をたくさんとる
生野菜なら両手1杯程度、火を通したものなら片手に1杯。野菜に含まれている食物繊維は、食後の血糖値が急激に上がるのを抑えてくれます。また、食事の量を増やしたい時には積極的に取り入れましょう。
主食は適量に
ご飯だけが血糖を上げるわけではありません。主食を減らしすぎると、おかずの食べ過ぎや、間食が増えるので注意しましょう。
牛乳・果物は決められた量を
一見低そうでも、カロリーは決して低くありません。コレステロールの気になる方は低脂肪牛乳やスキムミルクを選択すると良いでしょう。
薄味に心掛ける
新鮮な食材を選び食材のうまみを利用しましょう。また、だしや香辛料、薬味、柑橘類を利用し味を引き立て、塩分を控えるようにしましょう。
脂肪のとりすぎに注意
フッ素加工の料理器具を使用し油を控えましょう。また、網焼きや蒸し焼きなどで余分な油を取り除きましょう。
揚げ物での注意点
揚げ物は小さく切ってあるほうが油の吸収が多くなります。揚げ物の吸収率として、素揚げ5〜15%唐揚げ5〜10%、天ぷら13%、フライ20%となります。
 油を吸収しやすい素材:なす・しいたけ・玉ねぎ・麺類
 油を吸収しにくい素材:肉・イカ・エビなど
   
  外食時のポイント
外食は1日の摂取カロリーの3分の1を限度とし食べ過ぎないようにしましょう。
丼物や一品料理ではなく、弁当や定食などの品数の多いものを選びバランスをとりましょう。
外食は表1や表5が多く、表6が少ない傾向にあります。表1の食品は指示単位に合わせて残す気持ちが大切です。また、油の使った料理はできるだけ避けるか、少量にしましょう。
野菜が不足している場合は、サラダを追加するか、その日に自宅の食事で補うようにしましょう。
外食ではカロリーオーバーしやすいので「半ライス」「ドレッシングなし」など、注文の際、カロリーを下げる工夫をしましょう。
おすすめ外食・・・肉野菜炒め定食、刺身定食、煮・焼き魚定食、野菜サンド、五目冷やし中華(麺を1/3残す)
避けたい外食・・・パスタ、カツカレー、ハンバーグステーキ定食、天丼
   
  アルコールについて
アルコールは高カロリーで、その多くは栄養を含んでいません。
アルコールはインスリンの分泌を抑制し、さらにインスリンの抵抗性を強めます。
原則として禁酒ですが、コントロールのうまくいっている人で、ストレス解消や仕事の潤滑油になるという方は、医師に相談しアルコールと上手に付き合う方法を知りましょう。

アルコールを飲んでもいい時
 ・血糖コントロールが良好
 ・薬物療法を行っていない
 ・肝機能検査で異常がない
 ・重症の合併症のない場合
   
  家庭での食事療法が難しい方は、治療用食品宅配などがあります。
 
     
 
   
 
   
 
運動療法
糖尿病をひき起こす誘引や悪化の主な原因は過食と運動不足です。つまり、エネルギーの摂取量が消費量に比べて過剰となっている状態です。
運動は肥満を解消しインスリンの感受性を改善して、糖尿病のコントロールに役立ちます。食事療法に加え運動療法を行うことで、より効果的となります。
   
  運動療法の効果
血中のブドウ糖が筋肉でエネルギーとして利用され、血糖値が下がります。
2型糖尿病で低下しているインスリンの働きが改善します。
  脂肪をエネルギーとして使うため、中性脂肪や体脂肪の減少にも効果的です。脂質代謝を良くすることで、動脈硬化を予防し、血圧の改善も期待できます。
筋肉や体力を増強させ、また、ストレス解消にも役立ちます。
 
     
 
  運動療法を始める前に
安全に効果的な運動療法を行うためには、事前に身体状態を知る必要があります。合併症のある場合は運動が制限されることがあります。運動療法を行う際は、必ず医師に相談しましょう。
《運動を控える場合》
 ・狭心症や心筋梗塞など心臓病や肺機能の障害のある場合
 ・糖尿病性網膜症のひどい場合
 ・腰や膝の痛みがひどい場合や、体調の悪いとき
 ・血糖値が高い場合(空腹時血糖が250以上・尿ケトンが中等度以上)
 ・低血糖を起こしやすい場合
   
  運動療法の実際
開始時間 食後30分〜1時間くらいから始めることが理想的です。
運動時間 血中のブドウ糖および体内に貯蔵された脂肪が利用されるには30分程度の運動が良いとされており、1日に30分の歩行を1〜2回行うことが標準的とされています。
程   度 50%程度の強度の有酸素運動が望ましく、「らく」から「ややきつい」と感じるくらいの強さが良いとされています。1分間の脈拍数として100程度になります。

注意点
 ・ウォームアップ・クールダウンをとり入れ、少しずつ運動量を上げていきましょう。
 ・気候に合わせた服装で運動しましょう。
 ・適度な水分補給を心がけましょう。
 ・体調の良くない日は無理をしないようにしましょう。
 ・運動中に胸の痛みや圧迫感、低血糖症状を感じたら、運動を中止しましょう。
  ※足の痛みや、その他、症状のある場合は主治医にご相談下さい。

運動の工夫
 ・エレベーターやエスカレーターを使用せず階段を利用しましょう。
 ・駅と家の間を可能なら歩くなど、無理なく日常生活に運動を取り入れましょう。また、仲間と一緒に習慣づけること
  で、楽しく運動でき継続にもつながります。

運動の目安
 ・80kcalを消費する場合・・・歩行を20分間、ジョギング(140m/分)を12分間、ゴルフを20分間
 ・160kcalを消費する場合・・・バドミントンを25分間、普通の歩行を50分間
 ・240kcalを消費する場合・・・水泳を25分間、エアロビ・ジャズダンスを50分間

肥満のある方
 運動は思ったほどカロリーを消費しません。減食をしないで運動を行なっても、体重はあまり減りません。また膝や
 腰に負担がかかるので、怪我を避けるため食事療法で体重がある程度下がるまでは、軽い運動を行ないましょう。
 
     
 
   
 
   
  薬物療法
糖尿病の薬物療法には、経口剤療法インスリン療法の2つがあり、大半の患者さんは、経口血糖降下剤(経口剤)で治療しています。現在のところ、糖尿病を治してしまう薬はありません。日本人の糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病は、食事療法と運動療法が基本ですが、それだけでは思うように血糖値が下がらない時に補助的に薬物療法を行います。現在、国内で使われている経口剤は、大きく分けると5タイプあります。患者さんの糖尿病の状態に合わせ、1剤だけで治療することもあれば複数の薬を併用して治療することもあります。
 
   
 
  経口剤療法
   
 
  《経口血糖降下薬の作用》
種類 作用 内服時間
SU(スルフォニル尿素)剤 
 オイグルコン・ダオニール
 グリミクロン
 アマリール
膵臓を刺激してインスリンの分泌を促して血糖値を下げる。主に2型糖尿病に有効。 食前・食後
αグルコシダーゼ阻害剤 
 ベイスン
 グルコバイ
腸管内での糖質の消化・吸収を遅らせ食後の高血糖を抑える。この薬は、食直前(10分前以内)に飲まないと効果がなく、また時々お腹が張ったり、下痢をすることがある。 食事の直前
速攻型インスリン分泌促進剤
 スターシス・ファスティック
 グルファスト
SU剤と同様に膵臓を刺激してインスリンの分泌を促進する。薬を飲むとすぐに作用が現れ作用時間が短い。そのため、低血糖をおこしにくく食後高血糖の改善目的に使用される。 食事の直前
ビグアナイド剤
 メルビン
肝臓が血液中にブドウ糖を放出するのを抑える。また、筋肉などでブドウ糖がうまく利用されるよう助ける働きもある。 食前・食後
インスリン抵抗性改善剤
 アクトス
筋肉などの細胞でのインスリン作用を高め、ブドウ糖の取り込みを促進する。特に肥満糖尿病に有効。患者さんによっては体重が増えたり、むくみが出ることがある。 食前
   
 
経口剤は、こんな場合に有効です
基本的な治療法である食事療法や運動療法を行っているにもかかわらず、血糖コントロールができない場合に飲み薬を使います。薬の種類によって飲む時間が異なるため、できる限り正確に服用して下さい。
   
  飲み忘れに気をつけましょう
食前・食後などの飲み方が複雑、薬が見当たらない、水がなかったなどの理由でつい飲み忘れてしまうことが多いようです。「自分の体のために薬を飲む」という意識を持ち、飲み忘れをなくすように努力しましょう。
   
  自分で薬の量を調節しないようにしましょう
血糖値が下がりすぎたから休み、逆にあまり下がらないから薬を増やすといったことは避けましょう。
   
  それでも飲み忘れてしまった場合は?
「食後」に服用する薬は飲み忘れに気付いたらすぐに飲めばよいのですが次の服用まで時間がない時は、1回飲むのをあきらめます。「食直前」に服用する薬(ベイスン/グルコバイ/スターシス/ファスティックなど)は食後に服用しても、あまり効果はありません。次の食事から忘れずに飲むようにして下さい。2回分を一度に飲むことはやめましょう。
   
  飲んだか飲まなかったか分からなくなったら?
その時に飲まずに次から忘れずに飲んでください。2回分まとめて飲むのは危険です。
薬をあらかじめ1回分1日分ずつに分けておくなど、飲んだかどうかがすぐに分かるような工夫をしておきましょう。
   
  注意しなければいけないこと
経口剤が効いて血糖コントロールが改善すると、つい安心して食事療法や運動療法をおろそかにしてしまいがちなことです。そうなると再びコントロールが悪化し、経口剤の効果も弱くなります。また、血糖コントロール安定後も定期的に血液検査をして効果を確かめていきましょう。
   
  経口剤と飲酒
経口剤を服用している人が飲酒をすると薬の働きが強くなり、低血糖を起こしやすくまれに吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、腹部不快感、皮膚の発疹などがありますが長引く傾向があります。そのため禁酒が望ましく、また飲酒する場合にも低血糖に十分気をつけなければなりません。
なかには酒に酔いやすくなり、悪酔いする人もいます。
   
  経口剤と副作用
内服を中止すれば改善します。副作用と思われる時は、主治医に相談してください。
経口剤は血糖を下げる薬ですから、飲み方を間違えたら大変です!先生の指示は、絶対に守りましょう。
   
  もしもの時の低血糖症状にそなえて・・・
外出時や運動時は、低血糖の用心に砂糖と患者カードを必ず身につけましょう。
 
   
 
  インスリン注射療法
インスリン注射は、糖尿病で不足したインスリンを注射で直接おぎない、血糖コントロールを改善し、合併症の発症を予防する治療法です。
1型糖尿病の方は、インスリンがほとんど分泌されない為、インスリン注射は生涯欠かせません。2型糖尿病では、食事、運動、内服でのコントロールを行ないますが、これらの治療を続けていてもインスリンの分泌がかなり低下している場合は、インスリン療法が必要となります。2型糖尿病では、インスリン注射で良い血糖コントロールを続けていると、疲れた膵臓が休息できインスリンを作る働きが回復し、インスリン注射を必要としなくなる場合もあります。
   
 
  こんな場合はインスリン療法の適用になります
1型糖尿病・経口剤を服用しても血糖コントロールができない・手術前後・重症の感染症(肺炎など)にかかっている・肝臓、腎臓に重症の機能障害がある・妊娠中、妊娠の可能性がある・足などに壊疽がある場合など
   
  インスリンの働き方
健康な人では、常に少しずつ出ている『基礎分泌』と、食事で血糖値が上がった時にすぐ出る『追加分泌』によって、血液中に取り込まれた糖の流れをうまくコントロールしています。
1型糖尿病の方では、インスリンがほとんど分泌されていません。
2型糖尿病の方では、インスリン分泌はある程度保たれていますが、食後に必要な『追加分泌』が不足しており、タイミングも遅れがちになります。
   
  インスリンの種類
分類・種類 注射時間 作用時間
超速攻型
 ノボラピット300・ヒューマログ
食直前 注射後10分くらいから効き始め3〜5時間作用する
速攻型
 ノボリンR・ヒューマカートR・
 ヒューマリンR
食事30分前 注射後30分くらいから効き始め6時間作用する
混合型
 ノボラピット30ミックス
 ヒューマカート25・50ミックス
食直前 注射後10分くらいから効き始め約24時間作用する
 ノボリン10〜50R
 ヒューマカート3/7
食事30分前 注射後30分くらいから効き始め約24時間作用する
中間型
ペンフィルN・ノボリンN・
ヒューマカートN・ヒューマリンN
寝る前
食事30分前
注射後1〜3時間くらいから効き始め約18〜24時間作用する
持効型
ランタス
  基礎分泌を補うもので注射後1〜2時間くらいから効き始め約24時間作用する
   
  インスリン注射のポイント
・インスリン製剤は、開封前は冷蔵庫で保存します。凍らせると使用できなくなります。
・使用中のインスリンは常温で保存しましょう。車の中など高温の場所には置かないで下さい。
・混合型・中間型のインスリン製剤はゆっくり振って、薬液を混ぜ合わせましょう。
・注射部位は腹部・太もも(その他、上腕・臀部)に行ないましょう。毎回、注射部位を変えましょう(前回注射した
 部位から2〜3cm離して注射しましょう)。同じ部位に毎回注射すると、皮膚が硬くなり、吸収が悪くなります。
・使用した針や血液の付いた綿花は、受診時に病院で処分してもらいましょう。